■ 2/3 13:00-14:00 【組込み】組込みスキル標準の開発と活用



●[プレゼンター]IPASEC/SESSAME) 理事 渡辺登(沖通信システム株式会社から
出向しているそうです)
●[説明]SESSAMEでは、組込みソフトウェア開発者育成カリキュラムのためにスキ
ル標準を開発した。現在、『組込みソフトウェア開発力強化推進委員会』におい
て、人材育成および人材活用のために「組込みスキル標準」を開発している。ス
キルの可視化の方法、可視化されたスキルデータの利用方法を提示する。


●[話を聞いてみて]
コスト競争型産業でアジア諸国と比べて優位に立てない日本で、組込み技術を競
争力のキーテクノロジーにするという考えはとても現実性のあることなのだとい
うことを実感します。


しかし、スキル標準に関しては、果たして国内の公的機関主導で行ってうまくい
くのでしょうか。たとえば求人広告に「スキル標準いくつ以上」などと人材の判
断材料に使えるといった、MCPとかOracleゴールドと同様の効力が無いと魅力が
ありません。「あなたはスキル標準レベル4です」と認定されても効力が無けれ
ば無意味でしょう。そのような制度は役人の新たな食いぶちを増やすだけで、結
局形骸化してしまうことになってしまうのではないでしょうか。


やはり、国内の資格を取得せずに海外ベンダーの資格を取るのは国内資格が昇給
や就職にあまり有利ではないからなのです。費用対効果が国内資格より、海外ベ
ンダー資格の方が高いのです。


いずれにせよ、組込み技術は国内で大変重要であり、優位に立てる分野であることには代わりありま
せん。
その理由としては以下のようなものが思いつきます。


1 発注元が日本のメーカーである。(物理的にに近いし日本語で仕様の細かい
ところまで理解できる。)
2 ハードの多様性に合わせ、組込みソフトもさまざまなバリエーションを作ら
なければならず、職人的な世界である。(カスタマイズが得意な日本の長所を活
かせる)
3 つまり個別性が強くて、スタンダード化しにくい。(スタンダードを作るの
が苦手な日本の欠点が目立たない)
4 小さなモノの中に高機能な何か詰め込む作業である。(ウォークマン、ノート
パソコン、俳句、短歌など、日本人が得意な分野である)


組込みは以上のような特性を持っていますから、日本が競争力を維持できる分野
ではないかと期待しています。
組込みスキル標準、是非とも頑張って欲しいです。

●[セッション記録]
■組込みソフトウェアを取り巻く状況
情報サービス産業全体の売上が14兆円
従事者数51万人
組み込みソフト産業全体の開発規模が2兆円
開発者数15万人


組込みソフト開発の外部委託状況
日本 81.5%
米国 46.6%
欧州 34.5%
日本は高割合である。


組込みソフト開発の外部委託理由
企業規模が小さくなるほど、「自社に技術が無いため」という理由が増える。


■SESSAMEでの取り組み
10万人の組込みソフト技術者を育成して、組込みシステムを競争力のキーにする
ために発足。


■組込みソフトウェア開発協力化推進委員会での取組み
開発手法、開発プロセス、開発マネジメントといったエンジニアリングの策定。
組込み人材の強化。
「エンジニアリングと人材の両方を国内の同一組織がやるというのは珍しいこと
なんですよ」

●[参考資料]
ITスキル標準とは
http://www.ipa.go.jp/jinzai/itss/itss1.html
ITスキル標準とは、
各種IT関連サービスの提供に必要とされる能力を
明確化・体系化した指標であり、
産学におけるITサービス・プロフェッショナルの
教育・訓練等に有用な
「ものさし」(共通枠組)を提供しようとするものです。
http://www.ipa.go.jp/jinzai/itss/itss13.html
コンサルタント」や「プロジェクトマネジメント」、「ITスペシャリスト」
など11に分類。
IT技術者個人の能力や実績に基づいて7段階のレベルを規定。


SESSAME「組込みソフトウェア管理者・技術者育成研究会」
http://www.sessame.jp/


「組込みソフトウェア管理者・技術者育成研究会」趣意書
http://www.sessame.jp/toplinks/prospectus.htm
日本のソフトウェア産業が体質的にもっていたもの,
すなわち変革に対応できないという体制にあると判断できます.
競争の場が,
競争のルールが変わり,
それゆえに競争優位要因が大きく変化しているにもかかわらず,
旧態依然たる戦術で戦おうとしている,
例えて言うなら,
矢でも鉄砲でも使ってよいとルールが変わっているのに,
竹槍で戦おうとしている,その視界の狭さ,暗さにあると言えます.
(略)
「日本のソフトウェア産業の危機」とは,創造性型産業において米国に劣り,コ
スト競争型産業でアジア諸国に負ける
(略)
すると優位に立たなければならないのは,
組込みソフト
ファームウェア
埋め込みソフト,
エンベッデッドシステム)
ということになります.
その他の分野をどうするればよいのでしょうか.
OS,コンポーネントソフトは,圧倒的にアメリカが強いと言えます.
SAPのようなビジネスパッケージソフトが日本で生まれるでしょうか.
EDSのような,運用,アウトソーシングのビジネスで日本の会社が成功できるで
しょうか.
こうした分野を捨てるのか,
それとも日本が力を発揮できるもので競争優位要因となるものを見つけるか,
はたまた別の競争ルールを持ち込むか,
産業全体としての戦略が必要です.
例えば,アメリカのコンポーネントソフトウェアの強さに脱帽し放棄するのか,
それとも対抗するために,
フリーソフト文化の拡大を図って別の競争ルールを導入するか,
とびきり優秀なベンチャーがジャンジャン生まれる社会・経済インフラを作るか,
これまでの品質に対する常識を覆す契機となる
高信頼性コンポーネント
現実に経験させるか
などの何らかの策を講じるのか,
業界を挙げて考察することが望まれます.
(略)