クジラとカンガルー?

http://sankei.jp.msn.com/world/asia/100224/asi1002241719003-n1.htm
「カンガルー300万頭撃ち殺す豪州に反捕鯨の資格あるか」 国際紙がコラムを掲載




..........(ある夜のこと)..........


とあるニュージーランド人「日本は捕鯨をすることによって世界中で計り知れないイメージダウンを被っている。工業製品を売る国として大きなダメージを受けてしまっているわけだけどそれについてはどう思う?(=捕鯨を続けるのは日本の国益を考えたら馬鹿げていることではないか?)」

とある日本人「あんなのは言いがかりを付けて日本から金をむしり取ろうとするハゲタカのようなタカリ団体のアジテーションだ!」


(彼は上気しながら声を荒げて続ける)

「そもそも捕鯨問題が国際的な(というかアメリカ・イギリスの)議題に上がってきたのはベトナム戦争が泥沼化した真最中のことではないか!! アメリカはベトナム戦争での枯葉剤による非人道的な環境破壊という事実からアメリカ国民の世論の目をそらすために、日本の捕鯨という、哺乳類の中で最も知性のある生物のculling(間引き)という行為がなんて残酷なことなんだ!という哀話を仕立ててスケープゴートに利用したと考えた方がタイミング的に自然じゃないか。」

とある日本人「そもそも誰だ?くじらをランプの燃料にするために殺していたのは! ろくに肉も食わずに油だけとって殺して。日本人は殺めたクジラという生き物に感謝し、祈りまで捧げ、骨までしっかり大切に使っていたんだ!」

とあるニュージーランド人「そんな昔のことを引き合いに出すならば、いっそのことネアンデルタール人が火を使い始めたことを問題にしてはどうか? それよりも今現在の個体数の増減こそがポイントである。現在の捕獲量を続けても個体数が増え続けているならば問題無いが、日本側は海洋生物学者の調査の結果、現在の調査捕鯨を続けても個体数は増えていると主張しているのに対し、日本以外の世界中の学者がこのまま捕獲すればクジラは減り続けるだろうと警告しているのだ」

とある日本人「問題となっているのは一部の種だけで、ミンククジラなど調査捕鯨により捕獲し続けても増えていることは疑いの余地が無いではないか?」

とあるNZ人「その点についても科学者によっては全面的に否定しているのだよ」

とある日本人「そもそもなんで日本の捕鯨ばかり非難するんだ?人種差別感情入ってないか?アジア人は卑しく何でも食べるという偏見を持っているんだろう!ノルウェーだって捕ってるのになぜ日本ばかり標的にするのだ! 

アメリカはアラスカの先住民には文化だからという理由で捕鯨を許可した。日本の捕鯨も文化じゃないか!なのに何故? 汚いぞ!

NZ、豪 は 牛肉、羊肉、鶏肉の輸出国だから日本がクジラを捕らなくなっても得することはあっても、損することは一切ないやろ! 戦後、一時期日本は動物性たんぱく質のうち約3割は鯨肉から摂っていた。そのくらいクジラは貴重なものだったんだ!捕鯨問題がissueになってきた70年代、1億以上の人口を持つ日本の捕鯨を禁止すると言えば環境団体は食肉輸出国の利害関係団体からさぞや献金を貰えたことだろうなっ!」

■ある日本人の独り言。。。日本側の『クジラが増えると魚の漁獲高が減る』という主張。それはそれで主張としてすこし無理があるではないか?三陸あたりの漁師にも朴訥な東北弁で『捕鯨を禁止してからめっきり鰯が捕れなくなったべさ』とか言わせてみる。ちょっと待った、生態系ってそんな単純な因果関係で成り立っているんだろうか?例えばクジラをculling(間引き)しなければ、オキアミが減る、鰯が減る → それらを捕食する生物が減る、そして食物連鎖の先に位置するマグロが減る というほど単純なものではなく、例えばクジラがオキアミや鰯の天敵を食べていたり間接的にそれらの天敵を食べているので間引くと帰ってマグロの個体数が減るという可能性だってあるはずじゃないか?

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とある日本人がとあるNZ人に言う。
 「調査捕鯨という名目を使って確かに研究もしているのだが、捕獲したクジラを食用にしているのは少しインチキ入っているかもしれないさ。でも調査しただけで捨てるなんてそんな殺生、仏教の考え方に反するだろ?」


とあるNZ人 「だからと言って日本は調査捕鯨枠を目一杯使ってる、あんなに殺す必要があるのか?」


とある日本人「たしかにあれはインチキさ。今や哲学もリーダーシップも無い骨抜きの日本という国が、うやむやにして、(我々はこれを「なあなあ」と呼んでいるんだが)なし崩し的にやるというのはいかにもな常套手段だよ。そうさ、欧米人がもっとも不誠実だ、卑劣だと嫌うやり方さ。じゃあノルウェーがそうしたように『我々は商業捕鯨を再開する』と宣言してもフェアにあつかってくれるのかな?」

とあるNZ人「今日はずいぶん遅くなってしまった。また今度話そう。」

とある日本人「今夜はありがとう。この件はその2でまた話そう。」

「See you」

「See you, take care」








..........(数日後).............










とあるNZ人ととある日本人が言う。「そもそもの問題は何なんだろう?」

とある日本人は今この自分の酔っぱらった頭で考えられるような簡単なものじゃない気がしていた。英語もそんなに流暢に喋れるわけではないし。。。でも話さずにはいられない気分だった。なんなんだろうこのモヤモヤした気持ちは。

その日は海辺のヨットクラブのデッキで、潮風にあたりながらオーストラリア産の安ワインを3杯ほど飲んだ。食事を照らすライトが要らないほど月が明るかったので南十字星が見えなくてちょっと残念だった。

とある日本人(以下JP)「さまざまな要因が絡み合って話をややこしくしている、脳トレに格好の問題だね」

とあるNZ人(以下NZ)「脳トレって何?」」

JP「日本の電車って朝なんかは満員で身動きが取れないだろ?そんな時頭上に据え付けられた液晶ディスプレイにクイズが出るんだ。手足の自由の無いところではなかなかグッドな暇つぶしになるよ」

NZ「へぇ。ガジェット的なくだらない商品の殆どは日本からやってくる(笑)で捕鯨問題のどこが脳トレなの?」

JP「なるべく科学的論理的に話せるよう努力をするよ。この前みたいにならないように。
まず海洋の生態系という観点からみてクジラの個体数は本当に減っているのか?という問題。これですら学者の間で賛否両論があるね。」

NZ「減っている種もあるし増えている種もある』というのが大方の見解だと思う」

JP「僕は本当に今の調査捕鯨による捕獲を続けることによってクジラが個体数として減っているのならばやっぱり一時停止するべきと思うよ。

いやこれは僕だけじゃない。数が減って絶滅しそうなのにさらに捕ろうぜ!っていう日本人はさすがにいないだろう。痴呆とかじゃなければ。

ただし調査捕鯨をするしないに関係なく個体数が減少しているならば、それこそ継続的な調査のための捕鯨が必要だ、止めるわけにはいかない。」

NZ「そんなことはないと思う。捕獲しなくても、発信機を付けたり、食べたもののログを採るための装置を取り付けたりすることだって出来るだろう?」

JP「あ、確かにそれもそうだ。技術が進んでいるから今は捕獲しなくても調査出来るのかなあ。 調査捕鯨というシステムが作られた段階では殺して解剖するのが最も有効な調査方法だったのだろうけど。。。」

JP「どうであれ、学会で賛否両論真っ二つに割れている状態で捕獲を続けるのは危険だ。回復不能な状態まで乱獲してしまってからでは手遅れだからね。 

増えていますよ、という多数のコンセンサスが得られてから捕獲する必要があると思う。

例えば具体的には7割以上のコンセンサスは最低限必要だと思う。

また調査として捕獲する頭数はこれが調査に必要な最低限の頭数であるという説明を日本はもっと努力してするべきだと思う。

もし仮に調査捕鯨という名目で必要以上に捕獲し鯨肉業界が利益を得ているのだとしたらそれは反捕鯨を唱える欧米だけではなく自国の日本国民までをも欺いていることになる。

つまり日本は頭数が増えている種については商業捕鯨を開始すると明言するか、今まで調査捕鯨とウソをついて余計に捕獲していましたと訂正するか、調査捕鯨は本当に調査に必要な最低限の頭数しか捕獲しておりませんと理解してもらう努力をもっとするか。

いずれにせよ今ならば『前政権がやったことです、我々も困っています、ハイ』(岡田)でいいじゃないの。ドイツなんてアウシュビッツのことですら、国内でまるで他人事であるかのようにドイツ人がドイツ人のナチ職員を裁いていただろう?」




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NZ「私も科学者だよ。科学的な観点から見て頭数が海洋生物学的に増えているのか減っているのかこそが重要であり、残りのさまざまな議論は宗教やら政治に近いと思う、日本人の被害妄想的なカルト意見も含めてね。

例えば、「我々日本人はクジラをすみからすみまで感謝を忘れず大切に利用します」とか。

ランプ用の油を捕って残りを廃棄したって他の動植物がその廃棄物を栄養に育つので無駄にはなっていない。

今まで欧米がやってきた油獲得のための捕鯨を非難することは逆に日本人の価値観の押し付じゃないのかな。

ただ世論としてあそこまで動いてしまうと製造業が要の日本が被るダメージは大きいだろうね。」

JP「イメージダウンによってソニーやホンダが使う宣伝費のいったいどれくらいが無駄になっているんだろうかってことか。それを言うなら反捕鯨キャンペーンによってどれだけ日本からの留学生を受け入れるチャンスを失っているか、お互い様ではあるんだけどね。 さっき言ってた宗教とか政治ってどういうこと?」

NZ「私が宗教や政治と言ったのは例えば、実際はこちらで養殖したり家畜化出来ない動物を食べるなという意見。

確かに今はまだクジラを養殖する技術が未完成だけどそもそもなぜ家畜化されていない動物を食べることは悪なのか?

僕だってそれは価値観の押し付けだろうと思うさ。

それとか賢い生き物を殺すことは残酷なのか?という問題を指摘する人もいる。

そもそも動物が「賢い」とはどういうことなのかという問題がある。こんなの宗教だね。

我々科学者やちゃんと教育を受けた人は真に受けてはいないさ、でも世論という力として確実に影響を与えている。こんなことをいう人もいる。

今やホェールウォッチングの方が鯨肉を売るよりも良いビジネスなのだからそっちに切り替えなさいよ、と」


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JP「うんと、波の音で時々よく聞こえないところがあったけど大体言っていることは分かったと思う」

とあるニュージーランド人 「今日はもう遅いから帰ろう。」

とある日本人「See you Have a good sleep」

いろんなことが脳裏をループする。。。今回の件、また日本はウヤムヤにしてしまうのかもしれない。

日本がウヤムヤにしないために必要なのはもっと高い教育水準じゃないのかなんて思ったり。


海外の感情的な世論に対してさらに感情的な世論で反論したって何も生まれない。


泥沼に嵌らないためには賢明な政治家をサポートする質の高い世論を持つための教育水準が必要なんだ。全体的な教育水準高くなければならない。全てはここから始まっている。だからそもそもの問題は何なのか?という答えは僕の中では教育という事になると思う。。。いや少なくとも僕が英語でちゃんと論理的に議論と説明が出来るようになりたいんだ。そしてもしも僕の子供が出来たならば、そんな子供に育って欲しい、なんて思ってみたり。



安ワインの酸化防止剤のせいかな、頭が痛い。

「こんな話して本当によかったんだろうか?」って後で自己嫌悪しそうな一日だった。